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インフレ時代の家賃増額請求ガイド|法的根拠と進め方

物価の上昇や修繕費の増加が続く中、「家賃を上げたいけれど、入居者に言い出しにくい」とお悩みの大家さんは多いのではないでしょうか。実は、一定の条件を満たせば、契約期間中であっても法律に基づいて家賃の増額を請求することができます。この記事では、借地借家法の基本から交渉のコツ、トラブルを防ぐ手順まで、わかりやすく解説します。

なぜ今、家賃の見直しが必要なのか

ここ数年で、光熱費・建材費・人件費といったコストが大きく上昇しています。国土交通省の調べによると、建設工事費デフレーターは2020年から2024年にかけて約2025%上昇しており、修繕コストの増大を実感されているオーナーも少なくないでしょう。
一方で、「一度決めた家賃は変えられない」という思い込みから、何年も家賃を据え置いてきたオーナーも多くいます。しかしインフレが続く現代において、収入を変えずにコストだけが増え続けるという状況は、賃貸経営を圧迫するリスクがあります。
「家賃を上げること=入居者を困らせること」ではありません。適切な根拠と手順を踏んだ家賃の見直しは、オーナーの正当な権利であり、物件の資産価値を守るための重要な経営判断でもあります。

増額が認められる3つの条件

借地借家法では、以下の3つのいずれかに該当する場合、家賃増額の請求が可能とされています。 

  • 固定資産税・都市計画税などの公租公課が増加した場合
  • 物価・人件費・建設コスト・金利などの経済事情が変動した場合(現在のインフレ局面はこれに該当します)
  • 近隣の同種物件と比べて、現在の家賃が不相当に安くなっている場合

「増額しない」特約がある場合の注意点

賃貸借契約書に「一定期間は家賃を増額しない」という特約が記載されている場合は、その期間中は増額請求ができません。契約内容をあらかじめ確認しておきましょう。

トラブルを防ぐ!増額請求の3ステップ

家賃増額の手続きは、法律で一定の流れが定められています。正しい手順を守ることが、トラブルを防ぐ第一歩です。

STEP 1|書面による意思表示と話し合い

まずは「家賃を増額したい」という意思を、書面(記録が残る形)で入居者に伝えます。口頭のみでは後々「言った・言わない」のトラブルになりかねません。書面での伝え方や具体的な手続きについては、管理会社や専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
増額を求めるタイミングとしては、契約更新の時期が最も話を切り出しやすいでしょう。唐突に通知を送るより、「更新のご案内」と合わせて丁寧に伝えると、入居者も受け入れやすくなります。 

STEP 2|まとまらない場合は「調停」へ

話し合いで合意に至らなかった場合、借地借家法の仕組み上、一般的にはいきなり裁判に進むのではなく、まず簡易裁判所での「調停」という話し合いの場を経ることが想定されています。具体的な手続きの流れは、弁護士などの専門家にご確認いただくことをおすすめします。
調停では、第三者が間に入って双方の意見を整理し、解決の糸口を探ります。一般的に裁判と比べて費用や時間の負担が少なく、多くのケースで調停での解決が現実的な選択肢となることが知られています。 

STEP 3|最終手段としての訴訟

調停でも合意できなかった場合は、裁判(訴訟)という段階へと進む場合があります。鑑定費用や相応の期間を要することが多く、心理的・経済的な負担も大きくなります。法的手続きの詳細については、必ず弁護士などの専門家にご相談のうえで進めることをおすすめします。

知っておきたい「利息リスク」|交渉を有利に進める知識

もし入居者が増額を拒否し従来の家賃を支払い続けた場合、後に裁判等で増額が正当と認められたとき、借地借家法の規定により不足分に利息が加算される可能性があることが知られています。この点の詳細については、弁護士などの専門家にご確認いただくことをおすすめします。

交渉をスムーズに進める3つの実務ポイント

誠実な説明を最初に行う

いきなり書面で通知するのではなく、まずは面談や手紙で「なぜ増額が必要なのか」を丁寧に伝えることから始めましょう。物価の上昇や修繕費の増加といった、オーナー側が直面している具体的な背景を説明することで、入居者の理解を得やすくなります。

客観的なデータ(根拠)を準備する

「なんとなく上げたい」ではなく、具体的なデータを提示することが交渉の説得力を高めます。たとえば以下のような資料が有効です。

  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書(公租公課の増加を示す書類)
  • 近隣の同種物件の現在の募集賃料データ(不動産ポータルサイトや管理会社の情報)

こうした客観的な証拠をもとに、「現在の家賃が周辺相場と比較して不相当に安い」という状況を示すことができれば、交渉はよりスムーズに進みます。 

段階的な増額を提案する

一度に大幅な値上げを求めると、入居者の拒絶反応が強まりがちです。「今年は3,000円、来年さらに3,000円」というように、数年かけて適正な賃料へ段階的に近づける提案が、合意を得やすい方法のひとつです。

最もスムーズな値上げのタイミングは「退去・入れ替え時」

既存の入居者との交渉は、どうしても時間や労力がかかります。実は、最も摩擦なく家賃を見直せるのは、入居者が退去したタイミングです。
空室になった機会を活かして、水回りや空調、収納といった設備のグレードアップ(バリューアップ投資)を行い、新しい価値に見合った新しい賃料を設定する方法が、多くのオーナーに選ばれています。

よくある質問(Q&A

Q1. 契約期間中でも家賃を上げることはできるのですか?

  1. 借地借家法第32条の規定により、固定資産税の増加や近隣相場との乖離など一定の事情がある場合、契約期間中でも家賃増額の請求ができる仕組みになっています。ただし契約書の内容や個々の状況によって対応は異なりますので、まずは管理会社や専門家にご相談のうえ、方針を検討されることをおすすめします。

Q2. 入居者が家賃増額を拒否したら、すぐに裁判になりますか?

  1. 借地借家法の仕組み上、話し合いが整わない場合、一般的にはまず簡易裁判所での「調停」という段階を経ることが想定されています。調停では第三者が間に入り、費用・期間ともに裁判よりも負担が少ない形で話し合いを進められることが多いとされています。ただし具体的な手続きについては、弁護士などの専門家にご確認いただくことをおすすめします。

Q3. 家賃を大幅に一度に上げることはできますか?

  1. 一度に大幅な増額を求めると入居者の反発を招きやすく、交渉が難航するリスクがあります。実務上は「数年かけて段階的に適正家賃へ近づける」提案のほうが合意を得やすいとされています。具体的な増額幅や進め方については、管理会社に相談しながら無理のない計画を立てることをおすすめします。

まとめ|資産を守るための「稼ぐ力」を高めよう

インフレが続く現代において、家賃を長期間据え置くことは、実質的には収益の目減りを意味します。「値上げ=悪いこと」という固定観念を手放し、適切な根拠と手順のもとで家賃を見直すことは、賃貸経営を長く続けるための正当な判断です。
この記事でお伝えしたポイントを整理すると、次のようになります。

  • 借地借家法第32条に基づき、一定条件を満たせば契約中でも増額請求が可能
  • 書面による意思表示調停訴訟という法的手順を守ることでトラブルを防げる
  • 誠実な説明・客観的データ・段階的な増額提案が交渉成功のカギ
  • 退去・入れ替え時のバリューアップ投資が最も摩擦なく家賃を改定できる方法

 まずは自身の物件の現在の家賃が、近隣相場と比べてどのような水準にあるかを確認することから始めてみましょう。管理会社や専門家と連携しながら、長期的なキャッシュフローと資産価値を守る賃貸経営へとシフトしていきましょう。

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